本ウェブサイトでは、JavaScriptおよびスタイルシートを使用しております。
お客さまがご使用のブラウザではスタイルが未適応のため、本来とは異なった表示になっておりますが、
情報は問題なくご利用いただけます。
2006年9月
フォトカプラはパルス伝達やスイッチングに使うことが多く、ここで発生するパルス遅延は回路設計上重要な要素です。
しかし、発光ダイオード1個、フォトトランジスタ1個で構成される、いわゆる「汎用フォトカプラ」は、「アナログ素子」であり、その応答速度は使用回路の設計に大きく影響されます。
ここでは、そのような汎用フォトカプラの応答速度が持つ性質と考え方についてご紹介します。
汎用フォトカプラの応答時間は、入力順電流(IF)の流れ始まりと終わりとで、それぞれ次の図のように定義されます。

| td | :遅延時間(delay time) |
| tr | :立ち上がり時間(rise time) |
| ton | :ターンオン時間(turn on time) |
| ts | :蓄積時間(storage time) |
| tf | :立ち下がり時間(fall time) |
| toff | :ターンオフ時間(turn off time) |
いわゆる汎用カプラでは、立ち上がり時間(tr)と立ち下がり時間(tf)とが特性規格ではほぼ同等の値になっている場合もよくあります。
たしかに、受光トランジスタが完全にスイッチングしない状態(いわゆるリニア動作)で小振幅のパルスを伝達するのならばそういうこともありますが、そのような使い方をすると、CTR(電流伝達率)のばらつきで、出力振幅もばらつきます。
この出力振幅のばらつきをなくすために、カプラの出力は完全にスイッチングさせて使うのが一般的です。
その場合、負荷抵抗RLの値を大きくしますから、次のグラフから分かるように、実際には立ち上がり(ON)の td, tr に比べて立ち下がり(OFF)の ts, tf が桁違いに大きくなります。

実際には、大まかに考えて、立ち下がり(OFF)の ts, tf は立ち上がり(ON)の td, trに比べて標準的な使用条件で1桁くらい大きくなり、最悪では2桁近く大きくなると見込むのが一般的です。
したがって、規格値だけを見て品種選定や設計をすると、実際に動作させてみて、あまりの期待外れに驚くことになります。
以上のことから、汎用フォトカプラのパルス応答速度の上限を決めるのは、実際には立ち下がり(OFF)の ts, tf が支配的だと言うことができます。
そこで、ここでは、これらの ts, tf について、その発生原理とその性質を考えてみます。
ts ( =toff - tf ), tf はカプラの入力順電流(IF)がなくなったあとのことですから、次の図のように、入力順電流(IF)の影響はほとんどありません。

したがって、このときの内部等価回路には、次図のように入力発光ダイオード(LED)および、それによって流れる光電流は存在せず、受光トランジスタとその電極間静電容量とで表されます(コレクタ - エミッタ間容量は影響が小さいので省略します)。
なお、フォトカプラは「図1 応答時間の定義」の測定回路のように、エミッタ側に負荷抵抗を付けて使う例が多いのですが、のちほどコレクタ-ベース間容量Ccbの「ミラー積分効果」を用いて動作説明をしますので、その説明が直感的に分かりやすいように、次図以降は、エミッタ接地回路で説明します。

そのため、出力信号極性が「図1 応答時間の定義」とは反転しますが、もともとフォトカプラの場合は、次の2つの図のように、負荷がどちらにあっても信号極性以外の出力特性はほとんど変わりません(写真は、黄色が入力順電流、青が出力電圧波形です)。


まず、LEDが消灯して受光トランジスタの光電流が流れなくなると、主にベース-エミッタ間容量Cbeからベースに電流が流れ、その値はしだいに小さくなります。
(この説明は「等価回路」上のものであり、半導体物性的には「ベースキャリアのライフタイム」などと言います。)

したがって、入力がなくなってからコレクタ電位が上昇を始めるまでの時間は規格で規定する「蓄積時間(ts)」そのものではありませんが、その大部分を占めます。
さらに、スレッショルドは導通時のコレクタ電流値(Vcc/RL:以降「負荷電流」と呼ぶ)と受光トランジスタの電流増幅率hFEによって変わり、前者の値が小さいほど、そして後者の値が大きいほどベース電流が小さくてもトランジスタが導通を続けるため、「蓄積時間(ts)」も長くなります。
したがって、電源電圧Vccが一定ならば、蓄積時間(ts)は、「図2 応答時間v.s.負荷抵抗の例」のように大きな値の負荷抵抗RLを使った方が長くなりますし、CTR(電流伝達率)が大きい個体を使った方が長い傾向があります。
ただし、CTRに関しては、受光トランジスタの電流増幅率(hFE)と、それを組み込んだカプラのCTRとは完全な相関関係にはありませんから、そのような「傾向」の範囲にとどまります。
さらに、CTRの経時変化はほとんど発光ダイオード(LED)の発光効率の変化によるもので、CTRが下がっても受光フォトトランジスタの電流増幅率(hFE)が小さくなるわけではありませんから、「蓄積時間(ts)」が短くなることはありません。
次に、コレクタ電位が上昇を始めると、Cbeから代わって、今度は次の図のように、コレクタからコレクタ-ベース間容量Ccbの充電が始まり、その充電電流がベース電流となって流れます。

そのため、コレクタからベースに負帰還がかかることになり、ベース電流とCcbとの時定数が受光トランジスタの電流増幅率hFEに比例して長くなって、立ち下がり時間(tf)を長くします。
これは、「ミラー積分効果」として広く知られている現象です。しかし、「図1 応答時間の定義」の測定回路のようにエミッタ負荷回路で使うと、コレクタ電位が電源電圧に固定されていますから、一見コレクタ出力の変化がCcbを通してベースに帰還されるようには見えません。
しかし、フォトカプラが一般のトランジスタ回路と異なるのは、「ベース電位が固定されていない」ことです。そのため、入力がなくなってベース電流が減少すると、エミッタ電流の減少に伴ってエミッタ電位もベース電位も下がりますから、やはりコレクタからベースに対してコレクタ-ベース間容量Ccbの充電電流が流れます。
したがって、ベース-コレクタ間だけに注目すれば、負荷抵抗がコレクタ側でもエミッタ側でもまったく同じ現象が起こっていることが分かります。そのため、エミッタ負荷の場合でも、出力信号の極性を除いてほぼ同じ特性がエミッタ側で得られます。
立ち下がり時間(tf)はこのミラー積分効果が働く動作領域であるため、受光トランジスタのhFEが大きいほど、また負荷電流(Vcc/RL)が小さいほど、小さなベース電流で済みます。
そのため、蓄積時間(ts)と同様に、hFEが大きいほど、また負荷電流(Vcc/RL)が小さいほど、Ccbの充電に時間がかかり、tf が長くなります。
したがって、次の図のように、立ち下がり時間(tf)も、蓄積時間(ts)と同様に、大きな値の負荷抵抗RLを使った方が長く、またCTR(電流伝達率)が大きい個体の方が長い傾向があります。

しかし、やはりCTRに関しては、受光トランジスタのhFEと、それを組み込んだカプラのCTRとは完全な相関関係にはありませんから、そのような「傾向」の範囲にとどまります。
さらに、CTRの経時変化はほとんど発光ダイオード(LED)の発光効率の変化によるもので、CTRが下がっても受光フォトトランジスタの電流増幅率(hFE)が小さくなるわけではありませんから、「立ち下がり時間(tf)」が短くなることはありません。
上記で、電源電圧(Vcc)が一定であれば、ts や tf は「負荷電流(Vcc/RL)が小さいほど長くなる」と説明しました。
したがって、その場合は、負荷抵抗RLが大きいほど ts や tf が長くなります。
しかし、逆に電源電圧(Vcc)が異なる場合はどうでしょうか?
次の図は負荷抵抗値が異なる2通りの場合のts(蓄積時間)とtf(立ち下がり時間)の、負荷電流値(Vcc/RL)に対する特性です。

この図から、負荷抵抗が一定ならば、電源電圧(Vcc)の変化に対して、ts(蓄積時間)はあまり変わらないが、tf(立ち下がり時間)は電源電圧(Vcc)が高い方が短くなることが分かります。
この場合、電源電圧(Vcc)の上昇と共に負荷電流(Vcc/RL)が大きくなるのですから、本来ts(蓄積時間)も短くなるはずです。しかし、実際の測定では「振幅の10%」でtsを測定しますので、次の図のように電源電圧が異なっても、結果としてtsの「測定値」はあまり変動しませんでした。

さらに、負荷電流が同じならば、tsは電源電圧(Vcc)が異なってもあまり変わりませんが、 tfは負荷抵抗が10 kΩの方が5 kΩよりも長いことから、電源電圧(Vcc)が高い方が長いことが分かります。
これはtf(立ち下がり時間)はコレクタ電圧の振幅にも依存しているからです。
しかし、「図10 応答時間-負荷電流の例」では、負荷電流値(IL)が等しいとき、tf(立ち下がり時間) は電源電圧(Vcc)に(つまりRL値に)完全比例ではなく、RLが2倍(つまり電源電圧も2倍)違っても、tfはおよそ1.4倍程度しか異なりません。
なぜかと言いますと、トランジスタのコレクタ - ベース間容量Ccbは、一般的に、可変容量ダイオードと同様に端子間電圧が大きくなると値が小さくなる性質があるからです。
したがって、規格や特性曲線の測定条件とは異なる電源電圧で使う場合は、特にtf(立ち下がり時間)について、このような電源電圧依存性を念頭におき、使用電源電圧における確認が必要です。
一般的にトランジスタの電流増幅率(hFE)は「正」の温度係数を持ち、温度の上昇に伴って大きくなります。
このため、周囲温度が高くなるほど、ts や tf は長くなり、動作は遅くなります。

以上のことから、応答速度を重視するならば使用する品種のうちからCTRの小さい個体(ランク)を使い、負荷抵抗を可能な範囲で小さくし、十分な入力順電流(IF)で駆動した方が有利です。
しかし、順電流を大きくしても負荷抵抗値の低下には受光トランジスタの特性上の限度がありますし、また大きな順電流を流すと、カプラの寿命を縮めます。
基本はあくまで上記のような考察を通して、必要な応答速度が使用する条件内のどこでも確実に得られる品種を選び、無理のない動作条件で使うことです。