6.25Gbps以上の高速信号転送を可能にするパッケージ設計技術の開発について
〜分布定数回路を3次元的に組み込み、高速信号の波形劣化を低減〜
2008年5月28日 NECエレクトロニクス株式会社
NECエレクトロニクスはこのたび、LSIを実装するプリント基板の間のデータのやりとりを行う際に発生するインピーダンスの差、いわゆる「インピーダンス不整合」により生じるLSIの性能低下を防ぐことを目的として、BGA(Ball Grid Array)タイプのパッケージ基板に「分布定数回路」を3次元的に作りこむ設計技術を開発し、その設計技術を応用したシステムLSIの試作に成功いたしました。
今回当社が開発した新技術は、高周波分野で活用される分布定数回路的な設計手法を応用したもので、多層プリント基板で構成されるBGAパッケージ基板内に不可避的に存在するインダクタンスや容量などの寄生素子成分を活用し、電気信号の反射を相殺する回路を作りこみました。具体的には、寄生素子成分を一定の規則に基づき3次元的に分散配置することによって分布定数回路を形成し、LSIとプリント基板のインピーダンス不整合により生じる信号反射の波形の逆相となる波形を生成する技術です。
新技術によりLSIから別のLSIへ信号送信される際に発生する反射信号が相殺されるため、配線内での反射の繰り返しを防ぎ、波形劣化を最小にして対象のLSIへ送信することが可能になります。これにより、OIF(注1)が標準化した、規定周波数にて許容信号反射量規格であるマイナス8デシベル以下を達成し、反射量自体も従来パッケージ基板の1/2以下となるシステムLSIの試作に成功いたしました。試作されたシステムLSIは、1秒間に6.25ギガビットという大容量データの通信を行うルーターやサーバー向けシステムLSIで、チップ内に回路を追加したり、パッケージ基板の生産工程に特殊な工程を付加することなく、既存のパッケージ構造上で実現できるようになります。さらに、新技術はデータ転送速度が6.25Gbpsよりも高速となる10Gbpsクラスのデータ転送を必要とする製品にも適用可能となります。
また当社は、新技術をパッケージ設計に効率よく適用するため設計環境として、ビア、スルーホールおよび配線などを3次元分布定数部品として準備いたしました。パッケージ基板の配線設計を行う場合、これらあらかじめ準備された3次元分布定数部品を活用することにより、従来の電磁界解析を行いながら設計する手法と比較して、1/1000以下の時間で行うことが可能となります。
インピーダンスとは、LSIおよびプリント基板の構造・寸法、周波数依存性(注2)で決まる電気的特性値です。信号伝送回路において、送り側と受け側のインピーダンスが整合されている時に、受け側が受け取れる電力(電気信号)が最大になります。不整合の場合は、信号の反射が発生するため、受け側が受け取れる電力が減衰します。一般に、インピーダンスを完璧に揃えるのは不可能と考えられており、特に不整合が大きい場合は、電流の流れを妨げる抵抗値の差によりLSIとプリント基板の配線間で電気信号をあますことなく送受信することができず、反射した電気信号は配線間で反射を繰り返すという現象が生じ、LSIの性能が低下する原因となります。
一方、ルーターなどの基幹通信や高性能サーバーなど1秒間に6.25ギガビットもの大容量データ通信を行う分野では、LSI間の高速通信の実現に向けて電気信号の送受信が確実に行われる必要があります。データの通信スピードが速くなるに従い、インピーダンスの不整合の幅が大きくなってしまうため、このクラスのスピードに対応するため従来は、チップの各入出力チャネルに電流の流れを妨げるコイルを1個ずつ付加して整合回路を構成することによりインピーダンスの差を縮めるといった手法が考えられてまいりました。しかしながらこの方法では、チップサイズが拡大してしまい製造コストが高くなってしまう、またチップサイズ縮小のため微細プロセスでコイルを作りこむことから静電ノイズ耐性が低下してしまうという解決すべき課題を抱えております。
この課題を解決するために、特殊な素子を埋め込んだパッケージ基板を使用する技術も発表されておりますが、製造信頼性やコストの面で実用化レベルにはまだ至らないのが現状であります。
このような状況のもと当社は、インピーダンス不整合によって生じる信号反射を低減させる技術として、高周波分野で活用されている分布定数回路設計手法を高速なデータ伝送を必要とするLSIに応用することにしたものです。
当社は、新たに開発した設計技術を6.25Gbpsから10Gbpsクラスだけでなく、PCI Express verion2、USB3.0、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)など、1秒間に5ギガビットクラスのデータ通信を行う通信規格にも応用可能なものと考えており、積極的に新技術の応用製品の品種拡充を推進する所存です。
なお、当社は、本成果を5月27日から5月30日まで米国のフロリダ州で開催されるパッケージ技術に関する国際学会「The 58th Electronic Components and Technology Conference (ECTC)」で発表いたします。
以上
(注1)OIF
Optical Internetworking Forumの略。光伝送技術を使ったデータ通信の相互接続が保証された製品、サービスの発展を促すために光伝送装置内の各種インタフェースの標準規格を制定する団体。
(注2)周波数依存性
インピーダンスの値は周波数の影響を受ける。例えば、周波数が上がれば容量成分のインピーダンス値は下がり、インダクタンス成分のインピーダンス値は上がる。
ニュースリリースに掲載されている情報は、発表日現在の情報です。
その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご承知ください。
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