おもな半導体製品は、機能的には次のように分類されます。
NECエレクトロニクスでは、通信デバイスや表示・画像処理デバイスなどの専用品をASSP(Application Specific Standard Product:特定用途の標準製品)と呼んで、セミカスタム品のASIC(Application Specific IC:特定用途IC)と区別しています。
(1)ダイオード
一方向にだけ電流を流す整流素子です。ただし、逆方向でも一定電圧(降伏電圧)を越えると、導通状態になって電流が流れます。ダイオードの動作については、
半導体デバイスの動作原理をご参照ください。
(a)整流ダイオード
整流機能を利用して、交流電源から直流を得るために使用されます。ここで、1本のダイオードでは、マイナス側で出力しない半波整流のため、脈を打つような脈流を出力し、平滑コンデンサを設置しても、負荷に供給する直流電圧は低くなります。4本のダイオードを使用したブリッジ整流回路では、対向の2本が組になって、交流のプラス側とマイナス側で、隣り合うダイオードが交互に順方向となって、負荷に供給する電圧が途切れない全波整流となり、平滑コンデンサの設置で高い直流電圧が得られます。また、トランスの中間タップをグランドとした二相全波整流回路でも、同様の直流電圧が得られます。
(b)スイッチング・ダイオード
電源のような大電流を流すのではなく、小信号の高速スイッチング素子として、整流機能が利用されます。
(c)ツェナー・ダイオード
逆極性での降伏電圧を越えると、導通状態になることを利用して、定電圧を得る回路や、過電圧やサージ、静電気による回路の破壊防止に使用されます。ノイズ除去を目的とする場合、その用途から
ノイズ・クリッピング・ダイオードとも呼ばれ、特にサージや静電気の吸収を意図する場合は、サージ・アブソーバと呼ばれることがあります。
なお、ノイズ・クリッピングをしない通常動作時には、端子間容量が信号変化の
時定数に影響します。このため、高速信号線に使用する場合は、端子間容量の小さいものが必要となります。
(2)トランジスタ
入力信号の変化に応じて、増幅やスイッチング動作をする素子です。トランジスタの動作については、
半導体デバイスの動作原理をご参照ください。
(a)バイポーラ・トランジスタ
おもに電流増幅に用いられます。
エミッタ接地での電流増幅率(「出力/入力」の最大変化倍率)を
hFEで表し、製品ごとにh
FEランクが規定されています。バイポーラ・トランジスタは、極性でPNP型とNPN型、特性で
低周波用と高周波用に
分類されます。
なお、バイポーラ・トランジスタには、小信号トランジスタと電力用のパワー・トランジスタがあります。またパワー・トランジスタには、
ダーリントン接続で増幅率を大きくしたものもあります。
さらに、複数のバイポーラ・トランジスタを配列した
トランジスタ・アレイもあります。
(b)FET
入力に電流があまり流れない電界効果トランジスタ(FET:Field Effective Transistor)です。
J-FET(Junction FET)は、ゲート-ソース間を逆バイアスにして、電流制御をすることにより、増幅やインピーダンス変換に利用されます。ゲートに電圧を印加しなくても、ドレイン-ソース間に常時電流が流れる
デプレッション形です。ゲート電圧によって、ドレイン電流が制限されます。
MOS FETは、おもに回路のスイッチングに用いられます。また、極性でPチャネルとNチャネルに
分類されます。ゲートに電圧を印加しないと、ドレイン-ソース間に電流が流れない
エンハンスメント形です。
(3)サイリスタ
ダイオードはPN接合で構成されますが、サイリスタはこれを2つ直列にしたPNPN構造になっています。名称は、PNP型とNPN型を組み合わせてサイラトロン動作をするトランジスタ(Thyratron Transistor)に由来します。N極にはさまれたP極をゲートとして、ここに一定の電流を流すと、ダイオードとして機能するスイッチング素子です。単体のサイリスタを
SCR (Silicon Controlled Rectifier)と呼びます。
これに対して、2つのSCRを対向させて、交流制御に用いるものを
トライアックと呼びます。
(4)マイコン
CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)を内蔵するデバイスで、
プログラム処理で動作が自由に定義できることが特徴です。マイコンの基本機能は、入出力/転送と演算です。演算には算術演算(加減算など)と論理演算(AND、ORなど)があり、CPUにあるALU(Arithmetic Logic Unit)で実行します。入出力/転送の対象は周辺デバイスとメモリで、CPU主体の
MPU(Micro Processing Unit)に対して、最近はこれらを内蔵して組み込み用途などに利用される
MCU(Micro Control Unit)が主流になっています。
CPUには
アーキテクチャという概念があって、データ・ビット幅や命令セット、アドレス空間、
アドレシング・モード、周辺の資源割り当てなどが定義されています。現状のマイコンのデータ・ビット幅には、4、8、16、32、64ビットがあります。データ・ビット幅を横方向とすると、アドレスは縦方向で、これらの積が管理できるデータ量になります。なお、メモリとI/Oを別の空間として管理する方式と、I/Oもメモリ空間と同様に割り当てる方式(メモリマップトI/O)があります。
周辺デバイスには、表示などの出力、キーなどの入力、ディスク装置などの入出力をするI/Oデバイスと、タイマや割り込み制御、DMA制御などをするサポート・デバイスがあります。
メモリは
ROMと
RAMで構成され、通常はROMにプログラムが書き込まれますが、書き換えなどの目的でRAMにプログラムを置くこともあります。パソコンでは、起動プログラムがROMにあるだけで、
OSやアプリケーション・プログラムは、ハード・ディスクやCD-ROMなどから読み出し、RAMに展開して実行するようになっています。また、プログラム領域には、内部メモリの場合と外部メモリの場合があります。内部ROMについては、
マスクROMから
フラッシュ・メモリに主流が移り変わっています
CPUは、まずメモリから命令コードを読み出し(オペコード・フェッチ)、命令デコーダで解析して、
動作を決定します。このとき、PC(Program Counter)が、その命令コードのあるメモリの実行アドレスを指しており、プログラム実行ごとに更新して、次のアドレスを指定します。なお、最近のマイコンでは、命令実行ごとに次のオペコード・フェッチをするのではなく、プリフェッチ・キューに次々と命令コードを読み込んで、さらに実行も
パイプラインで続けて行って、処理の効率化を図ったものがあります。
データの入出力やALUでの演算では、アキュームレータ(最近のマイコンでは表現されていません)がバッファとなって、一時的にデータを保持します。メモリとのデータ転送やI/Oとの入出力では、対象アドレスをアドレス・バスに出力して、これをアドレス・デコーダで
デコードし、対象デバイスを選択して、データ・バスを通じてアキュームレータとのデータ授受をします。なお、最近の大量データを処理するマイコンでは、内蔵のキャッシュ・メモリにアクセス頻度の高いデータ群を置いて、アクセス効率の向上を図ったものがあります。
また演算の場合には、対象の2値をアキュームレータと汎用レジスタなどからALUに入力して計算し、結果をアキュームレータに入力します。
なお、
割り込みや
サブルーチン・コールでは、現在のアドレス(PCの内容)を戻り先アドレスとして、メモリ(RAM)の
スタック領域に退避させてから分岐しますが、その退避アドレスをSP(Stack Pointer)で管理していて、退避/復帰時にアドレス・バスを通じてその内容をRAMに出力します。
(5)メモリ
マイコン・システムなどで、データを記憶させるデバイスです。
(a)ROM(Read Only Memory)
読み出し用のメモリで、電源を切っても書き込みデータは消えません(不揮発性)。固定的なプログラムやデータ・テーブルなどを格納するのに使用します。ROMには、製造工程でマスクによるデータ書き込みをする
マスクROMや、製造後にお客様が電気的に書き込みをする
PROM(Programmable ROM)があります。またPROMは、書き換えができる
EPROM(Erasable PROM)と書き換えができない(一度だけ書き込み)
OTP(One Time PROM)に分けられます。EPROMについては、かつては紫外線で消去してから書き込む
UVEPROMでしたが、現在は電気的に消去したり書き換えができる
EEPROMが一般的です。EPROMは、プログラムが未完成時の試作などで利用されます。
(b)RAM(Random Access Memory)
システム動作時に任意に書き込み/読み出しができるメモリで、電源を切ると書き込みデータは消失します(揮発性)。一時的にプログラムやデータを格納するのに使用します。データの書き換えをする場合、上書きができます。
RAMには、電源だけ供給しておけばデータを保持するフリップ・フロップ回路によるセル構造の
SRAM (Static RAM)と、定期的にリフレッシュ信号を与えないと、電源を供給していてもデータが消失してしまうコンデンサ型セル構造の
DRAM(Dynamic RAM)があります。SRAMは使いやすく高速性に優れています。DRAMは大容量化に向いていますが、リフレッシュ制御が必要です。SRAMのセルのアドレスは、A0〜Anのアドレス線で直線的に配置されています。DRAMのセルのアドレスは、行アドレスA0〜Amと列アドレスA0〜Anでマトリクスに配置されていて、それぞれRAS(Row Address Strobe)とCAS(Column Address Strobe)の信号でアクティブにします。RAS信号がアクティブになると、選択されたワード線に接続されているメモリ・セルの電荷がビット線に伝わり、信号差がセンス・アンプで増幅されて、チャージされていたセルには再チャージされます。これがDRAMの
リフレッシュ動作です。
(c)フラッシュ・メモリ
EEPROMの一種ですが、1バイトごとの書き換えではなく、ブロック単位で消去・書き込みを行います。当初は書き込み用の電源端子(Vpp)がある2電源でしたが、最近は1電源でシステム上での書き換えもできるようになり、ROMやRAMの中間的な位置づけで、別に分類される傾向があります。
NECエレクトロニクスの最近のマイコンは、All Flash化によってフラッシュ・メモリの内蔵が一般的となっています。マイコンの内蔵メモリについては、
マイコンの内部ROMの種類をご参照ください。
(6)周辺デバイス
マイコンの周辺で、マイコンが単独で処理できない信号の入出力やデータ処理をするデバイスです。
(a)通信デバイス
システム間のデータ授受をするために、送信側と受信側の双方に出入り口としておかれます。そして双方の通信速度とプロトコル(通信の手順やフォーマット)を一致させることによって、相互の送受信が可能になります。
通信は、ATM(Asynchronous Transfer Mode)のような基幹系と、
USBのような機器間のインタフェースに大別されます。また、
データの並びで分けると、データ・バスのイメージで送受信するパラレル通信と、送信側でシリアル・データに変換(Serialize)して、これを受信側でパラレル・データに再変換(Deserialize)するシリアル通信があります。パラレル通信ではビット数の分だけ回線が必要で、またシリアル通信では変換回路(SERDES:Serializer/Deserializer)が必要となります。高速インタフェースの例では、パラレルのPCIに対して、シリアルの
PCI Expressがあります。
なお、シリアル通信では、ビット列に応じた通信時間が必要なので、最終ビットまで正確に送受信するために、送信側と受信側で同一クロックを基準にした
同期式がよく用いられます。
UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)のようなビット同期式(データ列については非同期)も一般に使用されていますが、数百k
bps以下で2%以下の速度誤差の場合に限られます。
また、一般に通信デバイスでは、送信データを送信側のCPUが立て続けに書き込め、受信データをCPU処理が遅くても立て続けに受信できるよう、それぞれ送信
バッファと受信
バッファとして、複数段の
FIFOを内蔵しています。
双方向の通信方式として、常時双方向で同時通信可能な
全二重と、方向を切り替える
半二重があります。
(b)表示・画像処理デバイス
表示デバイスは、
OSD(On-screen Display)用ICでの文字のような特定情報を出力します。OSDは、テレビの画面にリモコンの操作メニューを表示させたりする場合に使用されます。
また、画像処理デバイスは、画像データを出力したり、変形・変色などの加工や、
MPEG(Moving Picture Experts Group)での
符号化/復号化(CODEC:Coder/Decoder)をしたりします。ここで符号化/復号化は、伝送や保存のための情報量を少なくするための、圧縮・伸張のことです。プログラムや文字データなどは、1ビットでも欠けるとまったく異なった結果になるので、可逆圧縮(Lossless Compression)が必要ですが、画像や音声のデータは少々のビット欠けがあっても、人間には認識できないので、大幅に圧縮する非可逆圧縮(Lossy Compression)が採用されます。
NECエレクトロニクスでは、MPEGコーデックなどを内蔵した
EMMA(Enhanced Multimedia Architecture)シリーズなど、多彩な
デジタルAV用LSIを用意しています。
なお、画像を入力するデバイスとして、
CCDセンサ(撮像素子)があります。CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)は、フォト・ダイオードでの受光によって電荷を蓄積させ、それを画像データとして転送するものです。
表示形式には、画像を格子状の画素(ドット)に分割したドット・マトリクス形式と、デジタル時計のような固定形状を組み合わせたセグメント形式があります。ドット・マトリクス形式では、分割数を多くすると画素が小さくなって、形状の滑らかさや諧調度(グラデーション)の表現力が向上し、高精細な画像となります。ただし、データ量は膨大になるので、圧縮・伸張が重要になります。また、カラーの場合には、各ドットが光の三原色であるRGB(Read, Green, Blue:赤緑青)に分解され、各データをピクセルとして処理されます。ピクセル・データを明るさで諧調表現(たとえば8ビットで0〜255)することによって、ドットの色調や濃淡を表現することができます。
【ティー・ブレイク】
光の三原色である赤緑青を合わせると、白(無色)になります。ところが、絵の具の三原色は赤青黄で、合わせると黒になります。光の黒は、三原色がいずれもない状態です。
プリンタで紙に出力するにはインクを使用するので、色データの変換をして、シアン(C:水色)、マゼンタ(M:赤紫)、イエロー(Y:黄)と、深い黒を表現するためのブラック(K:黒)の4色で表現されます。つまり、ディスプレイではRGBで、また印刷ではCMYKで、それぞれ色が表現されます。
|
(c)A/Dコンバータ、D/Aコンバータ
A/Dコンバータ(ADC)は、アナログ信号をデジタル信号に変換します。これにより、各種センサなどの出力をA/Dコンバータに入力すれば、アナログ・データをデジタルで処理/伝送したり保存したりできるようになります。逆にD/Aコンバータ(DAC)は、デジタル信号をアナログ信号に変換します。これらを組み合わせることによって、たとえばデジタル放送やDVDなどでの映像・音声の伝送/記録と再生が可能になります。最近はいずれも、マイコンやASSPに内蔵される傾向にあります。
A/Dコンバータでは、一定周期で入力電圧をサンプリングして、フルスケールのうちどのレベルかを順次数値化します。たとえば、12ビットのA/Dコンバータなら、基準電圧をフルスケール電圧として4096分割して、n/4096から変換結果はn(000H-FFFH)となります。
D/Aコンバータでは、デジタル・データをアナログ電圧に順次変換します。その出力間隔をA/Dコンバータでのサンプリング周期に一致させれば、アナログ波形を再生できます。
(7)オペアンプ、コンパレータ
オペアンプ(Operational Amplifier:演算増幅器)はOPアンプとも表記され、アナログ入力と基準電圧を差動増幅する回路で、増幅やアナログ演算(加算・減算・微分・積分など)ができます。演算機能を利用して、A/Dコンバータの入力段にも用いられます。詳細については、オペアンプの
FAQをご参照ください。
なおオペアンプには、電圧差動型と入力にエミッタ接地トランジスタを使用した電流差動型(ノートン・アンプ)があり、NECエレクトロニクスは電圧差動型を製造しています。
コンパレータは、入力信号と基準電圧を比較する回路です。アナログ入力にもデジタル入力にも利用され、比較結果はデジタル出力となります。詳細については、コンパレータの
FAQをご参照ください。
(8)電源用IC
自動車用バッテリや家庭用の電灯線は、電圧が高すぎたり交流であったりして、そのまま電子回路の電源として使用できません。このため、電圧変換や整流((1)ダイオード参照)をする必要があります。このとき、リップルの除去やDC-DC変換をするのが電源用ICです。電子機器内部の電源や
ACアダプタなどに応用されています。詳細については、電源用ICの
FAQをご参照ください。
(9)標準ロジック
インバータやAND、ORなどのロジックICで、
論理回路の基本となります。現在、ユーザ・ロジックとしては、ゲートアレイなどで機能ブロックとして提供されています。
(10)ASIC
標準的な回路素子を下地に配列したICです。お客様のシステム回路に応じた製造マスクで表面配線をして、チップを完成させます。ASICによって、開発期間の短縮や機密保護、量産コストの低減などが実現できます。標準品とフルカスタム品の間に位置するため、セミカスタム品として分類されます。
(a)ゲートアレイ
MOSゲートを格子状に配列したデジタルASICで、配線によってANDやORなどの標準ロジックとその組み合わせ回路を構成します。
(b)セルベースIC
CPUや通信デバイスなどの大規模マクロを
IPコアとして用意したASICです。また、A/DコンバータやD/Aコンバータなどのアナログ・マクロも用意されています。
(c)アナログマスタ
バイポーラ・トランジスタや抵抗、コンデンサを搭載したアナログASICです。オペアンプやコンパレータも搭載しています。
(d)ミックスト・シグナルASIC
ゲートアレイとアナログマスタの機能を搭載した、デジタル・アナログ混載のASICです。
(2007/08)