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Volume 82 (2008/01/16)

32ビットAll Flashマイコン V850ES/Jx3-L:世界最高クラス電力性能への挑戦秘話


家電製品をはじめ産業機器や自動車など、あらゆる製品において、バッテリの長時間駆動や機器の低消費電力化が大きなテーマとなっている中、マイコンにもいっそうの低消費電力化が求められている。NECエレクトロニクスでは、従来品の半分以下という世界最高クラスの電力性能を実現した32ビット・マイコンを開発。この世界最高クラス実現に至るまでには、果敢に挑戦した開発チームの姿があった。


世界一といえる特長のあるマイコンを目指して

池田 守
汎用マイコンシステム事業部
主任 池田 守

「32ビット・マイコンの高性能は捨て難い。ただ消費電力がね・・・。」というお客様の声をよく耳にする。マイコンにかぎらず、性能と消費電力のトレードオフは、セットメーカにとっても、半導体ベンダにとっても終わることのない命題なのだ。この命題に真っ向から取り組んだ32ビット・マイコン開発チームがあった。

2005年の春、マイコン事業部のトップから「世界一といえる特長を持った32ビット・マイコンを作れ」という号令がかかった。さっそく開発チームは、次世代の32ビット・マイコンは何を特長とするべきか、何をもって世界一を目指すべきかといった検討に入った。製品企画の池田やシステム設計の下原、回路設計の古地ら各担当がNECマイクロシステムのある九州に集まり、合宿を行い、検討を重ねた。その中で複数のメンバから出てきたのがやはり"低消費電力"というテーマだった。


新製品の位置付け

それまで32ビット・マイコンV850は、そのパフォーマンスが生かせる市場に製品を投入してきたという経緯があった。そのため、どちらかというとハイエンド系のセットにターゲットを絞り、高性能を追求した開発を行っていた。しかし、開発メンバが考えていたのは「できるだけシンプルで、消費電力の少ないチップを開発したい」ということだった。そして「32ビットの性能を16ビット並みの消費電力で実現する」という目標のもと世界一ロー・パワーの32ビット・マイコンを目指して開発がスタートしたのである(図1)。


従来品の消費電流を回路別に徹底的に分析し、施策を検討

下原 一成
NECマイクロシステム マイコン開発事業部
システム設計グループ
主任 下原 一成

低消費電力と一言でいっても、漠然と取り掛かっていったのでは思うような結果が得られない。そこで具体的な目標値として、1mW/MIPSという数値を設定した。これは16ビットおよび32ビット・マイコンで世界最高クラスの値であり、達成のためには既存品の2.1mW/MIPSに対して半分以下のロー・パワーを実現しなければならない。そこで、まず既存品について、どの回路が電流をどのくらい消費しているのか、無駄に消費している回路はないか、など詳細な分析を行った。またマイコンに入れるメモリやタイマなど各部品や、設計環境、回路設計などの各部門の担当者にも参加してもらい、電流を下げるという全体のテーマを実現していくにはどんなことをやらなくてはいけないか、それぞれの立場から検討していった。その結果、ソフトマクロやハードマクロなど多くの関係部門と設計方針を決定し、実行していくことになった。


まず、ソフトマクロ部で最も消費電流が大きかったクロックラインは、駆動回路規模を1/3にする目標を立て、徹底した最適化を実施した。また消費電流の小さい低駆動セルを採用するなどの施策も行い、ソフトマクロ部合計で50%以上の消費電流の削減を達成した。


低消費電力を実現した設計技術

次にハードマクロ部では、最も消費電流が大きかったFlashマクロに着目した。CPUがFlashを必要としないときには電源をオフ(HALT)にするといった、小まめな電源のオン/オフ制御方式を検討した。タイミングの設定に苦労しながらも、何とか実現にこぎつけ、大幅な低消費電力化につなげることができた。そのほかの各項目についても、1つ1つ施策を実行していった結果、ハードマクロ部では40%以上の消費電力の削減を達成した。最終的には、ソフトマクロ、ハードマクロ合わせて全体で目標値の1mW/MIPSを上回る0.9mW/MIPSを実現したのである(図2)。


スタート時からのコラボレーションが大きな成果に

古地 将樹
第一マイコン事業部
汎用マイコン開発プロジェクト
主任 古地 将樹

「企画、システム設計、回路設計がそれぞれに検討を行うといった従来の開発フローでは、とてもここまでの成果は得られなかったと思います。企画、システム設計、回路設計が1つになった開発チームを作り、はじめの段階からコラボレーションしてきたことが大きな成果につながったと実感しています。」(池田、古地)これをきっかけとして、開発チームは、開発完了後も次のプロジェクトに向けて、九州と東京を行き来している。

「最初の段階で製品のコンセプトと目標値を定めることもプロジェクトを成功させる最大のポイントでした。そして、目標達成にはどんなことができるのかを関係する多くの部門から聞き、そこから施策を練っていった結果が開発の成果につながったと思います。特に仕様面では、電力性能比が最適バランスとなる周波数や搭載機能を関係部門の協力を得ながら検討できたことがよかったと思います。」(下原)


今回の低消費電力化へ向けた施策を標準化できれば、ほかの製品の低消費電力化にも応用することができる。今後、ますます機器の低消費電力化が求められていく中で、それに答えるためのロー・パワーに限界はないといえる。NECエレクトロニクスは、さらなる低消費電力を目指したマイコン開発に取り組んでいる。



超低消費電力をデモで体感!

11月に開催された「Embedded Technology 2007」では、32ビットAll Flashマイコン「V850ES/Jx3-L」の超低消費電力を紹介するデモが行われました。

「太陽電池程度の供給電力で電光掲示板表示制御と音声合成という比較的重い処理をV850ES/Jx3-Lで行うことができます。」




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