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Volume 80 (2007/11/15)

高速・高精細レーザプリンタ開発を支えるレーザコントロールコア(PWM)の話


ビジネス文書やデジタルカメラで撮影した画像を速く美しくプリントアウトしたいという要求に伴い、ビジネスからパーソナルまで幅広い領域において、高画質なカラーレーザプリンタの需要が高まっています。NECエレクトロニクスは、プリンタや複写機のさらなる高速・高精細化に不可欠なレーザコントロールコア(PWM)をセルベースIC用に実現。その実力とセット開発にあたっての導入のメリットをご紹介します。


レーザプリンタの仕組みとさらなる高精細への課題

レーザプリンタの印刷の仕組み

レーザプリンタの構成

レーザプリンタの仕組みを簡単に説明すると、正に帯電させた感光ドラムに画像データに従ってレーザビームを走査*1します。そして、その部分の電荷を除去し、トナーを付着させます。そのトナーを用紙に転写し、定着させてプリントアウトをするといった仕組みになっています(図1)。家庭向けに広く普及しているインクジェットプリンタと比べて、高速で高精細に印刷することができます。

レーザプリンタの特長であるスピードは走査速度と印刷方式によって決まります。高速機種の印刷方式は、「タンデム方式」が主流となりつつあります。これはCMYK*2の4つの感光ドラムと光源を持ち、一度に4色を走査、転写させる方法です。さらなる高速化に向けては、4ch(4ビーム)から8ch...32chというようにビームを増やしていくことも検討されています。

もう1つの特長である高精細を実現するためには、レーザビームの制御が鍵になります。感光ドラムへのレーザビームの照射は、画素データの"1""0"情報に応じてレーザをオン/オフし、感光ドラムに微小スポットを形成していきます。微小スポットの大きさ、位置をどれだけ細かく制御できるかで、1画素の解像度が決まります。また、レーザは等角速度運動をするポリゴンミラーによって反射され、fθレンズ*3を通ることにより感光ドラム上に等間隔に照射されるのが理想です(図2)。しかし、タンデム方式の場合、CMYKそれぞれのユニット間のfθレンズの特性のバラツキなどの影響で実際には等間隔にはなかなかなりません。これでは微妙な色ずれが起こってしまいます。そこで、周波数を変化させてレーザビームのオン/オフのタイミングを制御することでこの微妙な色ずれをなくす技術が有効となります。


画像を忠実に再現した印刷を可能にするPWM

PWMによる高精細印刷の仕組み:パルス幅分解能

微小スポットの位置、幅制御、レーザビームのオン/オフタイミング制御の鍵となるのがPWM(Pulse Width Modulation)というパルス幅変調技術です。PWMにより、レーザのオン/オフタイミング、つまり1画素内の幅や位置を微調整することで、画像の濃淡やエッジを忠実に再現した高精細な印刷が可能になります。さらには、PWMに周波数可変機能を付加することにより、レンズや機械的に発生するゆがみを補正し、理想的な状態に近づけることが可能となります(図3-1、3-2、3-3)。


PWMによる高精細印刷の仕組み:周波数可変機能:1ライン内固定

PWMによる高精細印刷の仕組み:周波数可変機能:1ライン内変調


しかし、PWMチップが高価なことから、これまではビジネスユースの中級機種以上に使われていることが多く、普及機種への搭載はあまり進んでいませんでした。NECエレクトロニクスでは、2002年ごろから安価で高精度なPWMの開発に取り組んできました。そして、PWMをセルベースICに搭載可能なレーザコントロールコアとしてIP化することで、大幅なコストパフォーマンスを実現しました。


PWMコア基本性能

NECエレクトロニクスのPWMコアは、パルス幅分解能8ビットによる256階調で高精細を、またパルス出力レート105MHzの走査速度で高速化を実現します。あわせてレンズや機械的な歪み補正に有効な周波数可変機能も搭載するなどプリンタやコピー機に最適な基本性能を持っています。さらに外部同期信号に対しても、1/16画素以内という同期精度を保証しています(表1)。この安価で高性能、さらに低消費電力なPWMコアによって、家庭用として開発される中級以下の機種においても広くPWM機能が搭載されていく可能性が広がったのです。


性能劣化なくPWMコアのオンチップ化に成功

しかし、PWMコアのオンチップ化は、簡単ではありませんでした。PWMコアをオンチップ化すると、ノイズの影響などによる性能劣化(動作速度や精度)が生じるからです。NECエレクトロニクスでは独自の高速・高精度技術の開発に成功し、これを解消。オンチップ化しても性能劣化しないPWMコアをセルベースIC CB-12(150nmノード)用で実現しました。今後、CB-90(90nmノード)以降の微細プロセスにも展開していきます。さらに、PWMコアを複数使用する高速プリンタなどお客様のセット構成のニーズに答えるため、セルベースICだけでなく、汎用品、SIP品などさまざまな提供方法を用意していきます。


また評価用として、USBケーブルでPCとつなぐだけでGUIベースですべてのパラメータを自由に設定でき、手軽にプリントデータの印字確認が可能な「レーザコントロールコア評価ボード」を用意しています。これによりお客様は、外部同期信号を入力し、LVDSもしくはLVTTL出力を受け取るという簡単な操作のみで、システムとの親和性をチェックでき、製品開発にあたって、当社のPWMコアをスムーズに導入することができます。


NECエレクトロニクスのPWMコアが、今後ますます高性能化するプリンタの開発を強力に支援し、その一層の普及を支えていきます。

注釈(*)


  1. 走査
    走査(scan)とは、テレビジョンやファックスなどの画像伝送技術において、画像を電気信号(映像信号)に変換する技術の1つ。
  2. CMYK
    色の表現方式の1つ。藍色(Cyan)、深紅色(Magenta)、黄色(Yellow)、黒(Black)の配合比率を変化させて、すべての色を表現する。
  3. fθレンズ
    レーザ走査に用いるレンズで、回転多面鏡で等角度走査されたビームを結像面上で等速走査させる機能がある。



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