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Volume 72 (2007/04/17)

目指せ!大電流:パワーMOSFET開発物語


車載用パワーMOSFETの開発物語は、業界初となる「2mΩの壁を破る」超低オン抵抗パワーMOSFETへの挑戦を目指して、2002年に始まった。そして、2004年5月。0.25μmプロセス(UMOS4)の採用により、40V耐圧で1.4mΩ(最大保証値1.8mΩ)を実現し、110Aの大電流容量に対応した「NPシリーズ」が誕生した。そしてすでにそのとき、さらなる大電流出力に向けた新たな開発物語が、幕を開けていた。


さらに大電流のパワーMOSFETを目指して

自動車電装用パッケージ開発動向

TO-263 7ピン 内部構造

「NPシリーズ」の出現は、小型自動車ではすでに普及している電動パワーステアリングの大型車への普及など、自動車の電子化の波に拍車をかけるものとして業界の注目を集めるものとなった。しかし、5年先の自動車開発において電動パワーステアリングは大型車を中心にさらにハイパワー化が進むため、より大容量出力のパワーMOSFETが求められていた。ある日、お客様から「160A対応で高品質のパワーMOSFETを探している」という打診があった。当社の電装対応MOSFETである「NPシリーズ」で大電流を実現できないかという内容だった。早速、他社製品のベンチマーク調査を開始した。大電流品については、各社ともしのぎを削っており、海外半導体メーカの160A対応パワーMOSFETが先行していたが、国内半導体メーカで160A出力品を出しているところは、まだない。「参入のチャンス」とみたNECエレクトロニクスは、本格的に大電流出力製品の開発に着手した。

当時、新製品の「NPシリーズ」で採用している3ピン TO-263パッケージでは110A出力が限界であった。そこで、160Aまで対応するパッケージ開発要求を受けた生産技術グループの清原俊範は、国内ではまだ採用されていなかった7ピンリードによって大電流への対応を目指した。電流がバランスよく流れるようにワイヤ位置を調整し、内部接続に直径400μmのアルミワイヤを採用すれば160Aに対応するパッケージ開発が可能との目途がついた。パッケージにあわせて、チップ設計も250nmのUMOS4プロセスを採用し改良を重ねた。ここまでは順調に開発が進んだ。しかし、これから先がどれだけ苦難の道であるのか、開発当初は誰も気付いていなかった。


手作りのサンプル試作と評価

清原俊範
パワーマネジメントデバイス事業部
生産技術グループ
シニアデザインエンジニア
清原俊範

評価用のサンプル試作が始まった。ところが、2005年当時は設計したパッケージをサンプル試作できる製造設備が整備されていなかったため、設備メーカの評価設備や生産工場でのマニュアル設備を使用して、手作りでのサンプル製作となった。福井から東京都内、マレーシア、京都、神奈川と、海外を含めたサンプル試作リレーとなったが、当初は各設備の製造精度やプロセス条件などに差があり、順調にはいかなかった。何度も出来上がったサンプルの評価を繰り返すうちに清原の熱意が通じたのか、関係者のベクトルが1つになり始めた。一致団結して時間もいとわずサンプル製作と評価に取り組む日が続いた。そして手作りのサンプルが完成した。「チップ設計部門、パッケージ設計部門、工場などの協力体制がなければ、実現できなかっただろう」と清原は感慨深げに語る。


山元賢介
パワーマネジメントデバイス事業部
MOSFET開発グループ
山元賢介

2006年1月、バトンは清原からMOSFET開発グループの山元賢介へ渡った。山元は、清原が手塩にかけて作り上げたサンプルで特性チェックを行った。中でも、パルス電流での限界評価は恐怖と隣り合わせの作業になった。1000Aまで持ちこたえることを確認したあと、パァーンという音を響かせて、サンプルが破裂したのだ。「予想はしていたものの、実際に試験をやってみるまでどの値で破壊するか分からなかったので、怖かった。」と振り返る。続けて行ったアルミワイヤの溶断電流試験でも同様にサンプルが破裂した。サンプルの破裂音にそのつどびっくりしたが、結果は設計通りの電流値が出たことで山元は安堵した。


試行錯誤の品質確保

奥浩一郎
パワーマネジメントデバイス事業部
商品企画グループ
主任 奥浩一郎

あとは、いかに品質を確保するか。2006年4月、サンプル出荷が始まった。商品企画グループ奥浩一郎は「電動パワーステアリングは、今後の車載システムで大きく伸びる分野であり業界最高を目指すというビッグプロジェクトだったので何が何でも製品を量産化まで進め、お客様の期待に答えたかった。」と希望に溢れていた当時を振り返る。早速、お客様から大電流パワーサイクル試験の評価要求があった。大電流試験用の試験治具が整っておらず、評価方法も確立されていなかったが、試行錯誤しながら評価を実施した。しかし、簡単にはお客様の要求値を実現することができなかった。


立山剛
パワーマネジメントデバイス事業部
信頼性システムグループ
チームマネージャー
立山剛

「なぜ駄目なのか・・・」何度も訪れる試練に奥は心が折れてしまいそうだった。「お客様の期待に答えたい」それだけを支えに不具合の解決に向けて関係部門との議論を重ねた。そこにはパッケージ開発に携わった清原の姿もあった。また山元から業務を引き継いだMOSFET開発グループ内沼善将の姿もあった。さらに品質保証のプロフェッショナルである信頼性システムグループの立山剛も加わり品質評価は進められた。「原因追求のため、解析・検討・実験・評価・設計変更を繰り返す日々で、苦労した時期でした。」と、清原は言う。また立山は語る。「これまでに経験したことのない試験での不具合であり、定量的に説明できず、お客様からお叱りを受けたこともありました。不具合となった原因や破壊メカニズムおよび改善方法について、何度かお客様を訪問してディスカッションするとともに、各部門協力のもと幾度も改善品の再試作を実施しました。」と、試行錯誤の日々を振り返る。製造ラインの改善や選別条件の見直しを行い、サンプル試作・評価を繰り返した。そしてようやく品質の問題が解決した。


ついに量産

内沼善将
パワーマネジメントデバイス事業部
MOSFET開発グループ
内沼善将

2006年10月。量産のための拡散プロセスや組立プロセスの確立のために、エンジニアが工場に付きっ切りで対応した。このときも、関係部門が一致団結して量産体制を確立した。「パワーMOSFET開発チームは、部門や役職に関係なく、意見が出し合えるすばらしいチームです。疑問や相談、議論などを頻繁に重ねながら開発しました。」と内沼は語る。そして、2007年2月末、160A出力製品の開発が完了した。「まずホッとした。」開発チームの面々から同じような安堵の言葉が発せられた。


業界初の「180A出力」のパワーMOSFETを目指して

現在、パワーMOSFET開発チームは、業界初となる「180A出力」のパワーMOSFETの開発を進めている。180Aにも対応できるようパッケージ開発を見直し、アルミワイヤはさらに電流を流せるように直径500μmを採用した。160A出力で培った技術や経験を基に開発は順調に進んでいる。「このような、市場に大きなインパクトを与える製品開発に携わることができて、個人としてもいい経験になっています。使用される用途が車載品ということ、部署内でも新しく取り組むことが非常に多く、モチベーションはとても高いです。」と内沼は話す。「最高性能品180A製品の発売を目指して、引き続き、開発トレース、フォローを続けていきます。」と、奥は気を引き締めた。

「オンリーワン製品の開発を目指そう!」
高いモチベーションとともに、パワーMOSFET開発物語はこれからも続いていく。




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