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Volume 71 (2007/02/28)

ASICコアの優れもの:電子機器のEMIノイズを低減するSSCGマクロ


私たちは電磁波(EMI)に囲まれて暮らしています。たとえば、太陽光から発生する可視光も電磁波エネルギーであり、自然現象として発生する電磁波もあります。赤外線や紫外線も電磁波です。一方、テレビ放送やラジオ放送、通信や携帯電話などで利用されている電波も、人工的に作り出された電磁波の一種です。暮らしの中にはさらにテレビ、冷蔵庫、電子レンジ、パソコン、プリンタ、デジカメなどの電子機器からも電磁波が発生します。これらの電子機器の電磁波は、通信の障害や電子機器の誤動作の原因となるため、世界各国で電磁波に対する基準値が法規制として強化されています。

たとえばEMIノイズを規制する代表的な規格であるCISPR*1に定められたノイズ数値をクリアしなければ、電子機器メーカは最初から開発をやり直さなければなりません。しかも電子機器はさらなる高機能化が進むことで、EMIノイズが増大する傾向にあります。


EMIノイズ低減に貢献するSSCG回路

周波数スペクトラム

変調方法

電子機器のEMIノイズを低減するためには、プリント配線板状にコンデンサやフェライトビーズなどのノイズ対策部品やSSCG(Spread Spectrum Clock Generator)回路を実装するか、ノイズ発生源を鉄板で囲い込む手法が一般的です。この中で特に注目されているのがSSCG回路です。

SSCG回路とはAISC製品などのクロック信号の周波数を変調させることでスペクトルのピーク値を下げる、つまりEMIレベルを低減することができるクロック生成回路です。周波数の変調方法は、周波数の逓倍率を時間ごとに変化させて周波数スペクトラムを分散させて、ピーク値を下げます(図1、2)。このSSCG回路を実装することでEMIノイズを低減することができます。しかしながらSSCG回路を外付けすれば、部品点数が増えてコストアップや基板面積が大きくなるといった課題が残ります。またEMIノイズ測定試験はSSCG回路を基板に実装してから行うため、必ずしも回路単体で測定したノイズ数値通りとは限りません。そこでNECエレクトロニクスは、EMIノイズ対策の発想を一歩進め、LSI自体にノイズ低減機能を付加することを考えました。つまり、オンチップ用SSCG回路(SSCGマクロ)の開発です。


オンチップSSCGマクロのメリット

当社の実績あるASIC製品にSSCGマクロを内蔵することで、より優れたEMIノイズ低減を実現します。1997年プリンタ向けに開発して以来、LSI自体にノイズ低減機能を付加するというコンセプトに基づいて、オンチップ用SSCG回路の開発研究を重ねてきました。この回路技術を生かしSSCGマクロとして0.35μmセルベースIC用の開発をはじめプロセスの進化に合わせて0.25μm CB-10、0.15μm CB-12向けのマクロを開発し、現在多くのASIC/ASSP製品に搭載されています。また2005年には変調特性の安定化を図り、ピーク低減度の条件による悪化を回避するためEMI特性ばらつきの少ない新方式(図3)によるSSCGマクロを90nm CB-90用に開発するなど、電子機器の高性能化によるEMIノイズの増大に対応するSSCGマクロ開発を行っています(表1)。


新方式SSCGブロック図

SSCGマクロラインナップ


EMI測定比較例

SSCGを内蔵することで外付けの場合と比べて良好なEMI特性(図4)を得ることができます。たとえば、変調度が大きく取れる、出力のチップ外配線が不要など、EMIノイズ低減の大きな改善が期待できます。さらに、低消費電力を実現するほか、逓倍率、変調周波数、変調度がプログラマブルで設定の自由度が広がります。


このようにSSCGをASICマクロとして整備することで、コストアップすることなくセルベースICなどのASIC製品に搭載可能です。またEMIノイズ評価期間の短縮に貢献します。よってプリンタ、デジカメ、デジタルTVなどの電子機器メーカの皆様のEMIノイズ対策の負担軽減と高機能化を両立するソリューションを提供します。


さらに一歩先のノイズ低減に向けて

今後さらなる高機能化に向けて周波数が高くなり、プロセスの微細化は90nmから55nmへと進んでいます。当然EMIノイズは増大し深刻な問題となるため、あらゆる電子機器に対してノイズ対策が必要となっていきます。NECエレクトロニクスは高機能化を実現するASIC製品と一歩先の課題である、さらに優れた特性を持つSSCGマクロの開発に取り組むことで、これからも電子機器のEMIノイズの低減に貢献します。



開発者コメント

開発者

EMIノイズを抑えるにはどうしたらよいか?そんなお客様の悩みを解決する方法として私たちがデバイスメーカの立場から考えたのは、ASIC製品にSSCGマクロを入れるという発想でした。ASICに内蔵することでセットのEMIノイズ低減だけでなく、評価期間の短縮や部品点数削減、コスト低減に貢献すると判断したからです。もしEMI特性が満足のいくものでなかったらASIC製品そのものが問われてしまうというプレッシャーはありますが、私たちの知識とノウハウを生かして、社内のASIC開発部門と協力しながら製品の開発を進めています。そして私たちのSSCGマクロを搭載したチップがお客様から高い評価を頂いたときにはやりがいを感じます。これからもチップのEMI低減を通じて、お客様だけでなくユーザの方にも快適にセットを使って頂くためのお手伝いをしていけたらと思います。


注釈(*)


  1. CISPR(国際無線障害特別委員会)
    無線障害の原因となる各種機器からの不要電波(妨害波)に関し、その許容値と測定法を国際的に合意することによって国際貿易を促進することを目的として1934年に設立されたIEC(国際電気標準会議)の特別委員会。



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