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ノートPCやPCモニタ、液晶テレビなどの普及に伴い、大型液晶ディスプレイ市場は年率10%を超える勢いで成長しています。NECエレクトロニクスはその駆動用デバイスである液晶ドライバICのリーディングカンパニー。今回、新たにフルHDサイズの大型液晶テレビ向け液晶ソース・ドライバICの新技術を発表しました。この新技術について、開発の背景とあわせて第五システム事業本部 表示システム事業部の中軽米(なかかるまい) 事業部長に聞きました。
現在、液晶テレビは年間約5000万台出荷されており、今後も年率30%の成長が見込まれています。2008年の北京オリンピックや2010年に南アフリカで開催されるサッカーワールドカップなどの世界的なイベントもあり、2010年には1億3000万台になると言われています。この頃には、全世帯のテレビに占める液晶テレビの比率は50%以上になると予測されています。
液晶サイズでは、現在32~37型の液晶テレビが普及タイプといわれていますが、価格帯が下がることで、42~46型、52~57型と大型の液晶テレビが普及していくと思われます。中には65型タイプも登場しており、ますます大型化が進んでいくでしょう。またデジタル放送への移行により、高画質化(高精細化・多色化)も進んでいます。
液晶テレビの大型化で課題になってくるのが、データ伝送方式です。液晶ディスプレイの駆動回路ではタイミング・コントローラICが液晶ドライバICを制御していますが、液晶の大型化によって、タイミング・コントローラICと液晶ドライバICを接続する配線距離が長くなってしまいます(図1)。45型を超える液晶の駆動回路では配線距離が50cmを超えてしまうため、従来のバス・インタフェース(マルチドロップ方式)では伝送が難しくなってきました。そこで、新しい伝送方式を考案する必要が生じてきました。
次にデータ処理速度の課題があります。液晶ドライバICは、通常のテレビ放送を再生する場合でも1秒あたり数百メガビットを超えるスピードで映像信号を転送する必要があります。この速度は、画面の解像度、色数(ビット数)に比例して増大するため、液晶テレビが高画質化するほど映像信号をより高速に転送する必要があります。たとえばフルハイビジョン(HD)対応では、システム全体で1秒あたり約3.6ギガビットにもなります。
さらに液晶ドライバICの出力数も課題のひとつです。高解像度になるほど使用個数も増えるためコストもアップしてしまいます。コストを抑えるためには使用個数を減らす必要があり、1つの液晶ドライバICにできるだけ多くの出力回路を搭載しなければなりません。
最大の課題であるデータ伝送に対して、NECエレクトロニクスは高速・大容量伝送を可能にする新しいインタフェース技術PPmL™(Point to Point mini-LVDS)を開発しました。PPmLインタフェース技術は部品点数の削減にも貢献するので、液晶テレビの低コスト化にも応える技術です。
従来のバス・インタフェースでは、ひとつのバスラインで複数の液晶ドライバICに接続していました(図2(1))。そのため液晶ドライバICの個数が増えても配線数は同じであり、バスラインの負荷で、スピードが上げにくいという問題がありました。PPmLは、タイミング・コントローラICと液晶ドライバICをPoint to Point(1:1)で伝送できるインタフェース技術です(図2(2))。ほかの液晶ドライバICの影響を受けないため、配線距離が長くても高速伝送(最大600Mbps/lane)できるようになります。またPPmLにより45型以上の液晶テレビでフルHDサイズの画面を制御するのに必要だった2~4個のタイミング・コントローラICを1個にできるので、結果的に低コスト化に貢献します。さらにPPmLは標準物理層(mini-LVDS)を採用しているので、シリコンへの実装が容易となり、開発TATを短縮します。NECエレクトロニクスはこの技術を採用して、このたびμPD160290, μPD160291を開発しました。
高速に伝送されてきたデジタルデータは、液晶ドライバICの内部でアナログ信号に変換されたあと、液晶ディスプレイの各画素に供給されて映像に変換されます。このデジタル・アナログ変換回路(D/Aコンバータ)は液晶ドライバICの内部回路では大切な部分です。従来のD/Aコンバータでは8ビットのD/Aコンバータが使用されており、RGB各色256段階の階調が表現できます。しかしながら、この256段階の表現では微妙な色合いを表現したり、ディスプレイのばらつきを調整したりするには不十分でした。今後は少なくとも各色1024段階の階調が表現できる10ビットに移行していくことになるでしょう。
10ビット以上の製品にトレンドが移行する際、多ビット化に伴うチップサイズの増大をどう抑えるかが課題となります。一般に多ビット化が進むとそれに比例してD/Aコンバータの回路規模は大きくなり、チップサイズに影響を与えます。そこで、μPD160290、μPD160291には、新たな技術として出力ブロックごとに搭載されるD/Aコンバータの回路サイズを小型化する技術を開発し、回路規模を増やすことなく1024段階以上の調整が可能な12ビット・リニアD/Aコンバータを搭載しました。この小型化技術のおかげで720チャネルの多出力が搭載できました(一般的には、414~480チャネル)。これにより、フルHDなら8個と、より少ないドライバICで構成でき、部品点数の削減に貢献します。
さらに、従来の液晶ドライバICでは、D/Aコンバータの特性はRGB共通で、液晶ディスプレイにあわせて設計されていました。このため、RGB独立して色調整することができませんでしたが、12ビットのリニアD/Aコンバータを採用することにより、RGBごとに10ビット精度でプログラマブルなガンマ制御を可能としました。これにより周辺部品を変更することなく、同一の液晶ドライバICをさまざまな液晶ディスプレイに使用することができるので、生産や部品管理の効率化が図れます。
液晶テレビは、ますます大型化、高画質化が進んでいくと思われます。NECエレクトロニクスは、その実現のための技術課題をひとつずつ解決していきます。その基盤となるのが、先に述べたPPmLインタフェース技術であると信じています。現在、このPPmL仕様を液晶部品メーカに開示し、これらの企業と協力しながら、業界の標準化を推進しています。NECエレクトロニクスは、すでに液晶テレビ向け液晶ドライバICで高いシェアを獲得していますが、今後はPPmLインタフェースの普及促進を図りながら、液晶テレビにおけるポジションを揺るぎないものにし、ディスプレイ・ドライバ業界No.1を目指していきます。
・PPmLはNECエレクトロ二クス株式会社の日本、韓国、中国における商標です。