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Volume 36 (2004/12/09)

自動車向け超低オン抵抗パワーMOSFET「NPシリーズ」誕生までの軌跡・第二部 (1/2)

「自動車用パワーMOSFETの条件の難しさ」


ひとつ上の0.25μmプロセスの採用へ

山田 学
写真 1 パワーマネジメントデバイス事業部
MOSFET開発
シニアデザインエンジニア
山田 学

2002年夏。オン抵抗値2mΩの壁を破るという夢を乗せたプロジェクトが船出した。プロセス開発のチームマネージャー小林研也の粘り強い説得の甲斐あって、製品開発と試作については、NEC関西工場が全面的に協力してくれることになったのだ。しかし、やっとスタートラインに立ったに過ぎず、ここからが本当の挑戦の始まりだった。この時点で、高橋事業部長(当時)から提示された具体的な目標値は1.9mΩだった。しかし、開発チームのメンバーは、すぐには首を縦にふることができなかった。なぜなら1.9mΩという数字が途方もない目標値だったからである。「なんとか1.99で、いや1.95ならなんとか・・・」と、製品開発の山田学は高橋に目標値のわずかな変更を提案した。しかし、そのわずかコンマ数mΩになんら根拠があったわけでも、ましてや自信などあったわけではなかった。ただ2mΩを切る製品は開発したいという思いと、高い目標値に対するプレッシャーを軽くしたいという思いからの折衝が交錯するなかでの変更提案だった。それほど2mΩの壁は厚かったのだ。結局、高橋からは、1.9mΩを目指すにはどのような方法があるかをよく検討するようにといった指示が出され、早速開発チームのメンバーは検討をすすめた。

オン抵抗値2mΩを切るためには、まず開発プロセスの微細化が必要になる。それまで進めていた0.35μmプロセスによる製品開発では、オン抵抗の目標値は2.4mΩが限界であることは目に見えていた。もうひとつ上の0.25μmプロセスの採用が必須条件といえた。だが、0.25μmプロセスによる製品開発は民生機器用ではすでに進められていたものの、より高い耐電圧を確保し、しかも自動車電装固有の厳しいセット環境条件や動作条件に耐えうる堅牢性を備えていなければならない自動車用への移行は、正直まだ先という段階にあった。しかし、そうは言っていられない。やると決まった以上はやるしかない。民生機器用と自動車用を同時に平行して進めていくという、かつてない異例のプロジェクトとなった。


オン抵抗値1.9mΩを目指し試行錯誤の連続

電動システムの電源のスイッチ機能を果たすという一見単純な部品と思われがちなパワーMOSFETだが、その開発にはさまざまな試行錯誤が求められる。抵抗値を小さくするのにも、ただ微細加工プロセスを適用するだけでは実現できないのだ。たとえば基板となるシリコン材料への不純物拡散方法にも改良が求められる。ヒ素、リン、ボロンといった元素が、適切な位置に適度な量だけ導入されることにより、電流はより流れやすくなる。つまりそれだけオン状態での抵抗値が下げられるわけだ。パワーMOSFETは、縦に3次元的に電流を流す部品であるため、特に縦方向の不純物の形成方法がその鍵を握る。小林(研)はプロセス開発チームメンバーの協力のもと、今までの経験で培った勘をたよりにコンピュータでシミュレーションを繰り返しながら、最も電流をよく流し、かつ耐電圧など他の重要特性は維持するような製法を模索していった。熟練者の知恵とコンピュータが手を組んで、ようやくこれ以上はないというベストな製造プロセスが割り出されていった。


マルチボンディングワイヤ技術

またパッケージへの接続にも、いままでにない新基軸が採用された。それは接続部のワイヤを従来の2本から4本にするというものだった(図1)。ワイヤ数を増やせば、その分だけ接続部のワイヤ抵抗が軽減できる。2本から4本になれば、ワイヤ抵抗は単純に1/2になる。ワイヤは1本わずか400ミクロン。接続部分の面積が限られているとはいえ、ほんのわずかずらすだけで、容易に3本にすることはできる。しかし、従来のパッケージ製造方法では、2種類のパッケージを同時に作り出すことができるものの、うち1つのパッケージは、センターピンの位置が規定されていたため、あと1本がどうしても増やすことができなかった。ボンディングの方法を検討するなど、さまざまなアイデアが出された。だが、どれも実現には至らなかった。どうにも先へと進めない悶々とした日々が続いた。そんなとき、4本打ち実現検討に頭を抱えていたパッケージ設計チームから、従来の2種類作り出せるパッケージ製造方法のうち、センターピンのずらせる1種類のみに絞ることで4本脚の接続ができるのではといった新たな提案が出された。このアイデアは見事に適中した。こうして4本脚での接続を可能にする画期的なパッケージが誕生したのだ。



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